闘うプログラマー

ISBN:4822740161
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とんねるずのみなさんのおかげですという番組に食わず嫌い王というコーナーがある。二人のゲストがお互いの好きなものを五品食べるのだが、その中に一つだけ嫌いなものが入っており、それを当てあうというゲームだ。
この番組を見ていると僕はいつも自分が出たら好きなものは何にして、嫌いなものは何にしようかと考えてしまう。たとえば好きなものは蕎麦、海鼠、ぶり大根、変わり豆腐で、嫌いなものはブロッコリー…。そう、あの番組を見ていると、ブロッコリーはあくまでも嫌いなものであって、食わず嫌いとはちょっと違う気がする。食わず嫌いのはずが、食べてみたらおいしかったというゲストは過去いたのだろうか?


まさに食わず嫌いだったという本を先日読んだ。Windows NT の開発ストーリーをノンフィクションで描いた「闘うプログラマー」がそれである。OS/2 よりも素晴らしい OS を作るというビルゲイツの野望を果たすために元 DEC のデイビッドカトラー率いるプログラマ軍団が壮絶な戦いの中で新しい OS を作っていく、という話だ。
この本が出たのは1994年だから、僕が大学1年のときだ。あのころ Windows NT 3.5 の日本語版が出たと記憶しているが、この本についてはあまり覚えがない。世間では話題にはなっていたのだろうけど、それほど興味がわかなかったのだろう。
その理由一つには、マイクロソフトがあまり好きではなかったというのがあると思う。技術的にもイメージ的にもマイクロソフトには悪い印象しか持っていなかった。MS-DOS は PC のパワーのわりに古臭いものであり、Windows 3.1GUI は最悪だった。僕はちょうど UnixLinux を知ったころで、アンチ MS の典型だった。
マイクロソフトへの印象が変わったのは Internet Explorer のバージョン4が出てからだ。Netscape Navigator よりもしっかりとした CSS サポートで、僕のマイクロソフトへの印象はがらっと変わった。単なるイメージよりも技術的な評価を中心にすべきだということにやっと気づいたのだろう。
闘うプログラマーが面白いのはマイクロソフト嫌いが直った以外に、就職して自分もそれなりに大規模なプログラム開発に参加できたことがあるかもしれない。なかなか進まない設計、多発するバグ、テストチームとの関係悪化など思い当たることがとても多い。実感をもって読める内容なのだ。
これからこの業界に入る人は一度読んでみるとよい。そして入って数年後改めて読み直してみるとさらに面白いかもしれない。僕もいつか読み直すと思う。